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「ニューヨーク9番街57丁目」感想(後半)

昨日に引き続き、「ニューヨーク9番街57丁目」の感想。
(7曲目以降の後半、あくまで本編にあたる10曲目までの感想です)

前に記したが、実はこのアルバム、後半の7曲目以降の4曲がとにかく素晴らしい!
「ロックなアルバム」という売り文句は気にせずに、7曲目以降を噛み締めるべし!


7曲目の「ヘディング・サウス・オン・ザ・グレート・ノース・ロード」から、ガラリと雰囲気が変わる。ただ、昨日も記したように、6曲目の「ペトロール・ヘッド」から間髪入れずに続けて流れる。タイプは180度違うけど、同じロード・ソングとしてセットになっているようだ。そのコントラストが素晴らしい。
ギター2本だけをバックに歌われるこの曲は、ある意味最近の流れに近い曲。そういう意味で、こういったトラディショナル・ソング系はもうお手の物といった感じで、とても雰囲気がいい。6曲目とは全く違う淡々とした歌声もとても良い。

8曲目の「イフ・ユー・キャント・ラブ・ミー」は、3曲目と同じ愛の終わりを歌った曲。
スティング大好き7拍子の曲。途中に6拍子(4+2拍子?)が交じってトリッキーになり、そこもいい。あと、こういった拍子の曲はカリウタの真骨頂ですな。
この曲もバンドのサウンドが素晴らしい!ただ、歌は完全に言葉羅列系。一緒に歌えるような代物ではない。そういう意味では、完全に聴くためだけの音楽。もちろん、それだけの実力がプレイヤー全員にあるわけで、とにかく演奏は素晴らしい。
言葉羅列系の歌だが、捲し立てて羅列しまくった後だけに最後の2センテンス・・・
‟If you can’t love me this way, Then you must leave me.”
「こんな風に君が僕を愛せないなら、僕のもとから去ってくれないか」
これが生きてくるし、メロディーも歌詞も胸に響く。
(随分勝手なことを云う男の歌ではあるけど・・・)

9曲目の「インシャラ」は、格別の仕上がり!今作のベストと云ってもいいかもしれない。
現代版「フラジャイル」とも云える内容。スティングが云っている通り、難民問題を政治的にではなく、人道主義の観点から歌い上げている。つまりは、スティングが相手の立場になり、相手の気持ちになって書いた歌であり、そこがとてもいい。
ある家族が(それは自分たちかもしれないわけで)、内戦の恐怖から逃れるために、小さなボートに乗って海に出る・・・なんという悲しみ、なんという恐怖だろうか。
とても素直な気持ちで歌っている曲とも云えるし、メロディーもしっかりしていて、言葉数も少なく、だからこそ胸を打つ。
現在アメリカでは、次期大統領ドナルド・トランプのせいで、移民に対する差別的な言動、行為が増加し、問題になっている。このタイミングで、この曲が発表された意味は、とても大きいように思えて仕方ない。
(シンプルに相手の立場、相手の気持ちになって考えることが出来たら・・・)
スティング、ありがとう!!こんなにも素晴らしい新曲を書いてくれて・・・
名曲、傑作です!!

10曲目の「ジ・エンプティ・チェア」は、シリアで殺害されたアメリカ人ジャーナリスト、ジェイムズ・フォーリーを取り上げたドキュメンタリー映画「ジム」のために書いた歌。映画の音楽担当のジョシュ・ラルフが書いた賛美歌のような曲をもとにして、歌に仕上げたものらしい(つまり歌詞はスティングで、曲は共作ということでいいのだろうか?)。
最初は、帰らない人のことを思い、椅子を一つ空けて待っている家族、友人や仲間の気持ちを歌ったものなのかと思ったのだが、歌詞を読むと、殺害されたジェイムズ・フォーリーの心情を歌っているものだと分かる。それが分かってから聴くと・・・この曲は、たまらないな。聴く度に、毎回涙がこぼれそうになる。
‟And somehow I’ll be there.”
「どうにかして僕はそこに行くから」
なんて悲しくて、切なくて、そして美しい歌なんだろう・・・
(ジェイムズ・フォーリー氏のご冥福を、心からお祈りします)
この曲を聴くと、申し訳ないがボーナストラックを続けて聴こうという気にはなれない。とにかく歌も、余韻も素晴らしい。それにしばらく浸っていたくなってしまう。
アルバム本編のラストを飾る曲としては、「ナッシング・ライク・ザ・サン」ラストの「シークレット・マリッジ」に匹敵する、いやそれ以上の名曲です!!


今回のアルバムを聴くと、セッションものもいいんだけど(それでも十分カッコ良いことが出来る人たちなんだが)、前段階のある曲の方が仕上がりが良いように思う。
1曲目「アイ・キャント〜」はボーナストラックのLAヴァージョンがあるし(たぶん前段階のセッション的なものだと思うんだけど・・・違うかな?)、「インシャラ」はベルリンでのセッション・ヴァージョンがあって、こちらがオリジナルだと本人が云っていたし、ラストの「ジ・エンプティ・チェア」は当初は共作のジョシュ・ラルフがピアノを弾いてレコーディングするはずだったようだし・・・

前段階、つまりは準備がしっかりあった曲の方がデキが良いということだ。
(やっぱり準備って大事なんだね〜、スティング!)


「スティングがロックに回帰」という宣伝文句は確かにいいんだけど(実際、それを知った時は嬉しかったし)、そんな陳腐で単純なものではないことが、後半4曲でよく分かる。「ロックに回帰」なんていう安っぽい売り文句は忘れて、冒頭数曲でこのアルバムを判断しないで、後半の4曲を、少なくとも本編ラストの2曲を必ず聴いてください!!

ラスト2曲、特に9曲目の「インシャラ」は、スティングの代表曲となり得る名曲!
今のスティングじゃないと書けない傑作です!!

スティング、本当にありがとう!!
ツアーが楽しみです!
ただ、ファンというものは欲張りなもので・・・
これからも、もっともっとあなたの新しい音楽を聴かせてください!!!









by adacha | 2016-11-18 23:13 | 音楽(ノンジャンル) | Comments(0)

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