「ニューヨーク9番街57丁目」感想(前半)
先日記したように、2日に分けてスティングの新作「ニューヨーク9番街57丁目」の各曲の感想を記そうと思う(本編にあたる10曲目までの感想です)。
1曲目の「アイ・キャント・ストップ・シンキング・アバウト・ユー」は、先行シングルとなった曲。スティングがDVDでも云っている通り、このアルバム全体のテーマを語っているような曲であり、このアルバムの1曲目に相応しい曲だと思う。
確かに、冒頭からポリス臭がプンプンするが、当然アンディ・サマーズのギターとは違うし、カリウタのヘビーなドラムも良い。比較的解りやすく、メロディーもキャッチーな方なので、そういう意味でも1曲目にはピッタリだ。
それにしても・・・最初はラブソングだと思っていたんだが、歌の中にある“You” がひらめきの比喩表現だとは恐れ入った。さすがスティングさんです!!
2曲目の「50,000」はネット上で見かけたが、確かに少し「インヴィジブル・サン」に似ている。Aメロ(と云えるかどうか)の歌詞は、先日記した羅列系。ただ、言葉を羅列した後だけに、サビが効果的ではある。とにかくサビが華やかで、内容からもライブでは盛り上がりそうな曲だ。この曲のドラムはヴィニー・カリウタではなく、ジョシュ・フリース。
3曲目の「ダウン、ダウン、ダウン」は冒頭はノイジーだが、歌が入ってからガラッと雰囲気が変わる。それにしても、円熟していると云うか、なんちゅう素晴らしいサウンドなんだ!愛の終わりを歌った曲だそうだが、サビの明るさがとっても良い。
この曲のドラムは1曲目と同じでヴィニー・カリウタ。シンプルなようで、結構複雑なプレイをしていて、さすがカリウタといった感じ。
ジョシュ・フリースのタイトで乾いたドラムも良いんだが、カリウタが叩いてる曲の方がサウンドに奥行きがあるように感じられるのは自分だけだろうか?(カリウタが叩いている曲だけはパーカッションも加わっているようだが、それも関係しているんだろうか?)ドラムが変わるとグルーヴだけでなく、バンドのサウンドもこれほど変わるものなのかと再認識させられた。意表を突いた物憂げな終わり方も面白い。
4曲目の「ワン・ファイン・デイ」は・・・最初、スピッツかと思ったよ。
とっても爽やかな曲だな〜。メロディックでとっても良い。ラストのギターのサウンドは確かにノイジーだけど、この曲も特にハードなロックなわけではない。
終盤、歌詞が畳み掛けられるけど、この歌は風刺曲だし、スティングらしい(英国人らしいと云うべきか)ジョーク、ユーモアを羅列してるわけで、これはこれで良い。言葉を畳み掛け続けて、最後に爽やかに「ワン・ファイン・デイ!」で終わる。この対比がいいのだ。
5曲目の「プリティ・ヤング・ソルジャー」、この曲は正直謎である。初めて聴いた時、まったくノレなかった。
冒頭「カントリー?ロッカバラード?」と思ったが、歌っているのは英国民謡でしばしば取り上げられる異性装のこと・・・こういった違和感をジョークとして取り扱うことがスティングにはあるけど、これは全くしっくり来ない。音楽に物語を乗せるのはいいけど、これはダメだ。結局は、音楽に物語を乗せてと云いつつ、言葉を羅列してるだけ。なんとなく、次へのつなぎのための曲のように感じられて仕方ない。
(実際、最初から通して聴いていても、この曲だけは聴き流してしまう・・・)
残念ながら、個人的には今回のアルバムの中のワースト(と云うより、これ以外は良いと思うんだが・・・)。ツアーでも取り上げないんじゃないだろうか?この曲がなくて、すぐに6曲目に行った方が流れが自然だったように思うんだが・・・スティングとしては、きっとつなぎの曲がほしかったんだろうな・・・
ただ、終盤のジョシュ・フリースのプレイは素晴らしい!
6曲目の「ペトロール・ヘッド」は、文句なしにカッコ良い!
それにしてもスティング、65歳・・・カッコ良過ぎるぞ!!
映像を観ると、時々「スティングも老けたなぁ〜」と思うことはあるが、歌声はそんなことを微塵も感じさせないな。
この曲だけオルガン、キーボードが使用されていない。文句なしのロックソングだ。
リズムやサイズは違うが、歌い出しがなんとなくツェッペリンの「ロックンロール」に似ているように思う(いや、それが問題なのではない)。
猛スピードを出して、ハデなアクションで走るトラックのタイヤが鳴いているかのようなギターのサウンドがたまらない!
長くなったので、7曲目以降は明日にでも・・・
それにしても今回のアルバム、曲順と云うか、構成のことをちょっと考えてしまう。
レコードのA面、B面で考えれば、やっぱり5曲ずつに分かれるだろうけど・・・
A面の最後が「プリティ・ヤング・ソルジャー」では、物足りない。そうなると、そういった考えは全くないのかもしれないな。
6曲目までがA面と考えてもいいけど、そうするとB面が短過ぎる。それに、間髪入れずに7曲目に行くし、ライナーノーツでも一緒に語られているように、6曲目と7曲目はタイプの大きく異なるロード・ソングとしてセットになってるようだ。
ドラマーで考えると、1曲目はカリウタで、2曲目はジョシュ・フリース。3曲目でまたカリウタに戻り、4〜6曲目はジョシュ・フリース。7曲目はドラムは入らず、8〜9曲目はカリウタと、2人のドラマーをうまく使い分けている。特に4〜6曲目でジョシュ・フリースが3連続でプレイしているところがミソなんだろうな。1曲目は別だが、ロック色の強いものはジョシュ・フリースが担当ということなんだろう。
(なんでも出来ちゃうカリウタの1曲目のロックなプレイも素晴らしいけどね!)
by adacha | 2016-11-17 22:00 | 音楽(ノンジャンル) | Comments(0)